★第5回ジビエ料理コンテスト 一般社団法人全国日本調理技能士会連合会会長賞★
原田 芙美 様(薬膳指導者・京都府福知山市)
レシピのポイント・開発者のコメント
鉄分の多い鹿肉にビーツ、ほうれん草、人参などの「血」に良い食材を合わせてボルシチ風のシチューに仕上げました。煮込み料理にすると固くなりがちな鹿肉を、みじん切りにして包丁で叩くことで柔らかく仕上げ、お子様や高齢者の方々にも食べていただきやすいよう工夫しました。より食べ応えがあるものを好まれる場合は一部をスネ肉に置き換えるとより肉らしさが際立ちます。
また、鹿肉と相性の良い出汁を昆布と干し椎茸で取り、煎り酒、味醂、味噌、といった日本ならではの調味料を使うことで、ご飯と相性の良い要素を盛り込みました。
家庭で調理しやすいよう、手順をできるだけ簡単にしています。調味料もできるだけシンプルに、野菜の甘みや出汁の旨味で仕上げました。
鹿肉は山椒の香りを纏うととても上品な味になります。紅ボール(鹿のミートボール)に山椒パウダーを入れることで、鹿の風味を引き立てるとともに、鹿と山椒の薬効により体を温める効果が期待出来ます。玉ねぎのみじん切りを加えることで、鹿肉の癖を抑え、甘みを加えるとともに、血や気の巡りを改善する効果が期待できます。これから寒くなる季節にぜひ食べていただきたい薬膳です。
野菜はできるだけ近隣の生産者さんから仕入れることで、鹿が生前好んで食べていたであろう地元の食材とのマッチングを図ります。鹿の食性、活動範囲、どうして近年獣害が増えているのか。知るにつれて、農業のこと、林業のこと、漁業のこと、全ては繋がっていると実感しました。
今年から販売している鹿のボーンブロススープを使用した薬膳鹿スープ「紅ボルシカ」を家庭料理としてリメイクしました。
鹿肉は鉄分を多く含み、体を温める効果も期待できるため、女性や高齢者、アスリートなどに適した食材です。病院に行かないまでも、様々な不調を抱えている人が多く存在する現代社会。体に役立つ鹿肉の魅力、もっと多くの人に知り、体の役に立ててもらいたいと思います。
材料 | 分量 |
鹿モモ肉(一部をスネ肉にしても) | 250g |
鹿脂(あれば) | 10g |
玉ねぎ | 350g |
人参 | 200g |
ビーツ | 300g |
ほうれん草(湯がいて絞った状態で100g程度) | 1束 |
ブロッコリー | 100g |
カットトマト | 400g |
米 | 2合(300g) |
生姜 | 20g |
煎り酒 | 30g(大さじ2) |
みりん | 36g(大さじ2) |
麦味噌 | 30g(大さじ2弱) |
塩 | 10~12g |
醤油 | 18g(大さじ1) |
山椒粉(朝倉山椒) | 0.3g |
出汁昆布 | 5g(20cm程度) |
干し椎茸 | 20g(4~5枚程度) |
米 | 1000cc~1200cc |
米油 | 24g(大さじ2) |
片栗粉 | 9g(大さじ1) |
1 昆布は 1cm 程度の細切りにして、干し椎茸と共に水 1000cc につけておく。干し椎茸が戻れば、スライスしておく。
※できれば一晩つけておく。昆布を途中で取り除く場合は切り離さずに切り目を入れておく。スライスした干し椎茸を使用する場合はそのまま使用
2 米を洗い、出し汁 400cc に浸しておく。30 分ほど吸水させたら、カットトマト 100g、生姜の千切り、醤油、塩小さじ1/2を加えて炊飯する。
※炊飯器の炊飯時間により調整する。鍋で炊く場合は7の工程の前(紅ボールをシチューに入れる前)くらいに炊飯を開始する。
3 玉ねぎは 50 グラムをみじん切りにし、残りは角切りに。人参、ビーツは乱切りにして(ビーツの一部を後から加える場合は小さ目に切っておく)、ほうれん草は湯がいて水にとり、水気をよく絞っておく。ブロッコリーは湯がいてザルにあげておく。
4 鍋に米油大さじ 2 をひき、分量の玉ねぎを入れて塩小さじ 1 / 2 を加えて混ぜ 5 分置き、その後透明になるまでソテーする。
5 人参、ビーツを軽く炒め、油が全体に回ったらトマト缶300cc、出汁600cc(昆布、干し椎茸も一緒に)、煎り酒、みりん、ローリエを加え、30 分程煮込む。
※弱火でじっくり火を通す。鍋により、水分蒸発の様子を見て、水分が減るようであれば水100~200cc 加える。色良く仕上げたい場合や昆布の摂取を控えたい場合は出汁昆布を柔らかくなる前に取り出しておく )
6 煮込んでいる間に紅ボールを作る。鹿モモ肉、鹿脂(あれば)を包丁で細かく切り、みじん切りにしたほうれん草と合わせて叩き、みじん切りにした玉ねぎ、塩 3g、山椒粉をよく混ぜ合わせ、25g 程度のボール状に丸める。
7 野菜がある程度柔らかくなったら麦味噌、塩で味を整え⑥の紅ボールを加える。より色良く仕上げたい場合はビーツの一部を残しておき、ここで加える。煮立ってきたら火を弱め、5 分煮込んで火を消して余熱で仕上げる。(10 分以上蓋を開けずに置いておく。すぐに食べる場合はさらに 5 分程度加熱)。ミートボールに火が通れば再び鍋を火にかけ、水溶き片栗粉でとろみをつける。
8 お皿にご飯をよそい、シチューを盛り、ブロッコリーを上に散らす。