★第6回ジビエ料理コンテスト 一般社団法人全日本司厨士協会会長賞★
木村 夕星 様(調理師・大阪府茨木市)
レシピのポイント・開発者のコメント
まず今回使用致しました鹿肉は京都府南丹市に位置する美山町の鹿で丁度この時期ですので秋の山をイメージした料理に仕立ててみました。秋でこの地域といえば栗にしめじ、どちらもこの土地を代表する食材であると思いまさに地元食材を生かすという考えに沿っていると言えるでしょう。さらに今回は『あるべきものはあるべき場所へと』と鹿がちゃんと山で暮らすようになって農作物の被害がなくなってもらいたいという願いを込めました。
栄養素の面では鹿肉は鉄分が多く含まれている食材ですのでそこを生かせるアプローチを考えました。豊富にある鉄分を効率よく吸収させやすくするにはビタミンC、クエン酸やリンゴ酸などの果実酸が有効ということでしたので積極的に使用していきました。
それが栗とリンゴです。栗にはビタミンCが豊富に含まれておりかつ加熱によって壊れにくい性質をもっているので前述した地域食材を生かす考えも相まって最高に相性のいい組み合わせであったと思います。
次に安全性や取つき易くするためにした工夫ですが鹿肉は高たんぱくで栄養も豊富に含まれている食材ではありますが牛、豚、鳥などに比べると脂質が少なく万人受けし辛いのかと思いましたので今回は脂質を豚バラ肉で補い、ハンバーグにすることで色々な人がたべやすくなるのではと思いました。さらにビールで煮込むことによってさらに柔らかく、家庭ではなかなか判断しづらい火の入れ方もわかりやすくていいのでは?と考えました。そして私が考えるジビエ肉普及のネックである手に入りづらさや値段の問題も脚などの比較的安く使いやすい部分が使える料理なので家にいる時間が必然的に増えてしまう昨今には普及に一役買えるのではと考えました。
材料 | 分量 |
《ハンバーグ種用(付け合わせも含む)》 | |
鹿のすね肉 | 200g |
鹿のもも肉 | 100g |
豚バラ肉ブロック | 100g |
塩 | 4g |
黒胡椒 | 2g |
ナツメグ | 1g |
玉葱 | 1個(約280g) |
丹波しめじ(畑しめじでも可) | 1パック |
人参 | 1本(約280g) |
玉子(Lサイズが望ましい) | 1個 |
牛乳 | 30g |
パン粉 | 30g |
《栗のピューレ》 | |
丹波栗(その他栗でも可) | 240g |
ブイヨン | 120g |
生クリーム | 20g |
バター | 10g |
塩 | 適量 |
胡椒 | 適量 |
ナツメグ | 適量 |
《リンゴのチャツネ》 | |
リンゴ(なるべく大きいもの) | 1個 |
バター | 少々 |
砂糖 | 少々 |
リンゴ酢 | 小さじ1 |
生姜 | 5g |
丁字 | 1個 |
《煮込み用》 | |
ビール | 350ml |
フォンドヴォー | 300g |
カソナード(三温糖で代用可) | 30g |
リンゴ酢 | 20g |
薄力粉 | 20g |
トマトペースト | 20g |
タイム | 1本 |
ローリエ | 1枚 |
ローズマリー(乾燥) | 少々 |
ニンニク | 1片 |
《飾り付け》 | |
イタリアンパセリ | 1枝 |
プチマーシュ | 1パック |
菊花(黄) | 1輪 |
菊花(赤) | 1輪 |
《その他 (調味用など)》 | |
オリーブ油 | 適量 |
塩 | 適量 |
胡椒 | 適量 |
まず栗を剝きやすくするために浸水させておく。
《野菜の下処理》
・玉葱は外側の薄い部分は粗いみじん切りに【A】、中心部は繊維を断ち切るように薄切りにしておく【B】。
・人参は皮を剥き、先半分は粗いみじん切りに【A】、残り半分は大きく乱切りしておく【C】。
・丹波しめじは掃除し傘の部分3cm ほど切り出し【D】、残りの部分は粗いみじん切りにする【A】。
《ハンバーグを作る》
①フライパンに油をひき、熱し粗いみじん切りの食材【A】を入れ、ある程度水分がなくなるまで炒め(この時食感を残すためにあまり炒めすぎないようする。粗いみじん切りもこの為である)、
冷ましておく【E】。
②鹿のもも肉とすね肉は掃除し、もも肉は7mm ほどの角切りに、すね肉はざく切りにしていく。
※掃除して出た筋などはまとめて焼いておく。
③豚バラはざく切りにし、先に切っておいたすね肉とともにフードプロセッサーにかけ、しっかりペースト状にしてから粗めの裏ごし機で裏ごしする。
※この時出た筋も可能な限り回収して他の筋のように焼いてまとめておく。
④裏ごしたものと切っておいたもも肉と合わせ分量の塩、黒胡椒、ナツメグを加えしっかりと練る。
⑤白っぽくなるまで練れれば、炒めた野菜【E】、玉子、あらかじめ合わせておいた牛乳とパン粉加え、しっかりと混ぜ合わせる。
⑥ 4 つに分割し空気を抜きながら丸く成形する。後にしっかりと煮込むのでまん丸で問題ない。
《煮込み工程》
①深い鍋に油をひき薄切りにした玉葱【B】と皮のままのニンニクを入れ火にかけ玉葱が黄金になるまで炒る。(ニンニクは焦げそうであれば取り出しておく。)
②炒まれば、乱切りの人参【C】、カソナードを加えキャラメル色になるまでさらに炒める。しっかりとキャラメリゼすることが重要である。
③キャラメリゼ出来れば、リンゴ酢を加えてこれ以上の熱上昇を抑え、焼き付いているところがあればしっかりとこそげ取る。
④振るっておいた薄力粉、トマトペーストを加え、だまにならないように合わせておく。
⑤鍋にビール、フォンドヴォーを加えひと煮立ちさせ灰汁を取る【F】。
⑥フライパンに油をひき、火にかけハンバーグの表面を焼き固める。
⑦焼き固めたハンバーグを【F】の鍋にいれ一度沸騰させる。この段階で液体の温度は 90℃以上である。
⑧お茶パックにタイム、ローリエ、ローズマリー、取り出しておいたニンニクをいれ、さらに別お茶パックに先に焼いておいた肉の筋を入れたものを鍋に入れ、蓋をして1時間半煮込む。
お茶パックに入れることで取り出しやすく出来る。
煮込んでいる間に付け合わせを用意する。
《丹波栗のピューレ》
①浸水させておいた栗の皮を渋皮も一緒に剥く。
②皮、薄皮を剥剥いた栗を、可能な限り薄く切り、砂糖(分量外)を加え灰汁を取る。砂糖を揉みこみ水で一度だけ洗い流す。
③鍋に栗、ブイヨンを入れ一度沸騰させてから蓋をして 150℃のオーブンで約 20 分、手でつまんで崩れるぐらい柔らかくなるまで火を入れる。
④火が入ればミキサーにかけた後、再度鍋に戻し生クリーム、バターを加え、角が立つ程度の濃度まで煮詰めて、塩、胡椒、ナツメグで味を調える。
《リンゴのチャツネ》
①リンゴは洗い皮を剥く。皮はしっかり細かいみじん切りにする。
②芯の部分を取り除き、薄切りにする。
③鍋にバターを熱し、砂糖を加え溶かし、リンゴ、みじん切りにした皮、リンゴ酢、すりおろした生姜、丁字を加えてリンゴを潰しながら火を入れる。蓋をしながら火を入れる。
④水分がなくなりまとまってくれば完成。
《仕上げ》
① 1 時間半経過したら鍋の蓋を外し、お茶パックを取り出す。この段階でハンバーグの中心温度は 90℃オーバー確実なので食中毒の問題はない。
②とろみがついてくるまで煮詰めていく。
《盛り付け》
①あらかじめ水でイタリアンパセリ、プチマーシュつけておく。
②イタリアンパセリの葉は千切りにする。この時綺麗な葉を8枚取っておく。
③丹波しめじの傘の部分をフライパンで炒め、塩をしておく。
④煮込んだ鍋からハンバーグ、人参、玉葱を取り出しておく。ハンバーグ、人参を優しく取り出せばあとは濾せばよい。
⑤ソースとして仕上げる為に塩、黒胡椒で調味する。
⑥丹波栗のピューレ、リンゴのチャツネ盛り付け綺麗なイタリアンパセリを飾りつける。
⑦ 12 cmのセルクルを置き、その中に玉葱を下敷きにしてハンバーグを皿の上に盛り、周りに人参、炒めた丹波しめじを盛り付ける。
⑧ハンバーグの上からソースをかけプチマーシュ、菊花を飾りつける。
⑨最後にハンバーグの上に千切りのイタリアンパセリを飾り完成。