★第7回ジビエ料理コンテスト プロ部門 農林水産省農村振興局長賞受賞作★
木村 夕星 様(株式会社京都ホテル ホテルオークラ京都 スカイレストランピトレスク)
【レシピのポイント】
今回の料理は、北近畿に位置している丹波地方の山々をイメージしました。
自然の山で暮らしている猪や鹿は、もちろん山の食材を食べて生きています。豊かな山の恵みだけですくすくと育ってもらえるようになれば、人里の農作物などへの被害が抑えられると思います。彼らもまた、人と接する機会が減ることでストレスが軽減され、双方にとってもいい環境になってもらいたいという願いを込めました。
料理としての組み合わせでも、ジビエと山の食材、特に根菜類との味の相性は抜群に優れています。また、ジビエのネガティブな部分はある程度消すことができ、良いところである優れた栄養素の吸収を助けてくれる効果が期待できます。鹿、猪ともに優れている鉄分においては、ビタミンCが摂取の補助をしてくれます。それが豊富に含まれ、さらに熱にも耐性があるのが、丹波地方の特産品である丹波栗であったので、今回の料理にも採用いたしました。これはジビエ料理だけにとどまらず、肉料理全般に言えることです。この料理でその情報が広まればと考えています。
そして調理方法についてですが、猪肉は豚肉に比べビタミンB12がおよそ3倍含まれているということですので、それを生かせるように調理しました。ビタミンB12は水溶性ビタミンですので、あまり肉の水分を出してしまう調理法は適していません。なので、フランス料理のアッシェパルマンティエをベースに、クロケット仕立てにしました。これは鉄分の観点からでも、ビタミンCがある程度豊富なじゃがいもなどとの組み合わせで有効になっています。温度管理もあまり気にしなくていい点も汎用性があります。
鹿肉については、高温で火を入れるとパサついてしまい、食感が悪くなってしまいます。それを簡単に、そして安全に調理するために真空調理を選びました。これによって安定した提供の実現と、低温調理ならではのしっとり感を再現できます。しっかりと休ませてからしっかりとバターで焼き色も付けておりますので、香ばしさとの両立もクリアしています。
ソースに関しても、しっかりとしたバターソースを含めた2種類のソースですので、ジビエに不足している油脂分も補える料理に仕上げています。
家庭では完全に再現するのは厳しいかと思います。ですが、ジビエのネガティブな部分を可能な限り中和したこの料理を食べてもらうことによって、ジビエを食べたことがない人も一度食べて苦手だった方々も、もう一度チャレンジして好きになっていただけたらと思います。
▼鹿ロースの低温調理
鹿ロース | 400g |
タイム | 4枝 |
ニンニク | 2片 |
オリーブオイル | 少々 |
ブランデー | 少々 |
バター | 適量(やや多め) |
▼猪バラのクロケット
猪バラ | 40g |
タマネギ | 10g |
ニンニク | 半片 |
赤ワイン | 50ml |
ブイヨン | 50ml |
丹波栗(他の和栗で代用可) | 2個 |
ジャガイモ(メークイン) | 20g |
ヤマイモ | 20g |
ニンニク | 1片 |
タイム | 1枝 |
バター | 5g |
キャトルエピス | 少々 |
パン粉(細かいものを使用) | 40g |
パセリ | 1枝 |
薄力粉 | 少々 |
鶏卵 | 1個 |
▼付け合わせ
リンゴ | 半個 |
グラニュー糖 | リンゴの10% |
バター | リンゴの5% |
クローブパウダー | 適量 |
丹波しめじ(他のしめじで代用可) | 20g |
マイタケ | 10g |
シイタケ | 10g |
生クリーム | 15g |
ごぼう | 1本 |
ヘーゼルナッツオイル | 少々 |
★丹波栗(他の和栗で代用可) | 2個 |
ブイヨン[栗を煮る用] | ★の10%の重量 |
バター[栗を煮る用] | ★の5%の重量 |
ビーツ | 40g |
赤ワインビネガー | 10g |
グラニュー糖 | 10g |
オレンジジュース | 10g |
菊芋(小ぶりなものが望ましい) | 6個 |
▼ソースポワヴラード
鹿ネック | 400g |
タマネギ | 60g |
ニンジン | 60g |
セロリ | 20g |
ニンニク | 1片 |
ブランデー | 20ml |
赤ワイン | 500ml |
フォンドヴォー | 300ml |
フォンドジビエ(なければフォンドヴォーを倍量で対応) | 300ml |
黒コショウ | 10粒 |
▼ソースベアルネーズ
エシャロット | 10g |
エストラゴンヴィネガー | 30ml |
白ワイン | 50ml |
白コショウ | 5粒 |
卵黄 | 1個 |
水 | 20ml |
澄ましバター | 60g |
イタリアンパセリ | 2枝 |
セルフィーユ | 2枝 |
エストラゴン | 2枝 |
▼飾り付け
アマランサス | 12本 |
レッドソレル | 12枚 |
菊花(黄) | 1輪 |
菊花(紅) | 1輪 |
▼調味料など
バター(炒め用、モンテ用) | 適量 |
揚げ油 | 適量 |
塩(フルールドセル) | 適量 |
コショウ(黒、白使い分ける) | 適量 |
コーンスターチ | 適量 |
◆猪バラのクロケット
1. ジャガイモは水洗いしニンニク、タイムとともに5%の塩水 で優しく茹でる。
2. 山芋は水洗いし適量を振り、アルミ箔で包み、130℃のオーブンで(どのような状態になるまで)火を入れる 。
3. 栗は付け合わせのものといっしょに鬼皮を剥いたのち重曹(分量外)を使用して灰汁抜きを行う。(鍋に栗とたっぷりの水を入れ沸騰したら重曹を加え、白濁したらお湯を捨てる。この工程を数回繰り返す。)
4. 灰汁抜きが完了したらクロケットで使用する栗のみジャガイモとともに火を入れる。
5. ジャガイモ、山芋、栗は竹串などがすっと入るようになったら皮、渋皮を取除き裏ごしする。この時栗は粗めに手でほぐす程度にとどめておく。ジャガイモ、山芋は細かいほど良い。
6. 熱いうちにバターを混ぜ合わせて塩、コショウで調味しキャトルエピスで風味をつける。
7. 芋や栗を火入れしている間に猪バラはフードプロセッサーまたはミンサーにかける。
8. 細かくなったら 、肉の重量の1%の塩を加えて、白っぽくなりまとまるまで練る。あらかじめ油をひき温めていた鍋に塊の状態で入れ焼き色を全面にしっかり付けたのちほぐし、さらに炒める。
9. みじん切りにしたタマネギとニンニクを加え香りを出す。
10. 香り出たら赤ワインを加え水分がほとんどなくなるまで灰汁をひきながら煮詰める。
11. 煮詰まったらブイヨンを加え水分がなくなるまで煮詰め、塩、コショウで調味する。
12. 裏ごししたジャガイモ、ヤマイモ、栗を合わせ20gを一人前として円柱状の小さいセルクルに詰め形を整え、冷凍庫で冷やし固める。(セルクルがなければ手で俵型に成形す)
13. 十分に固まったら薄力粉、溶きほぐした鶏卵、フードプロセッサーなどでパセリとともに細かくしたパン粉の順に衣として付ける。
14. 180℃の油に約2分30秒入れ表面をサクッと揚げ150℃のオーブンに10分ほど入れアツアツにしておく。(オーブンに入れるのは仕上がるタイミングに合わせる。)
◆鹿ロースの低温調理
1. 鹿肉は筋の部分を取り除く。この時取り除いたものは後述するソースポワヴラードに使用する。
2. ラップフィルムを広げ、4等分に切り分けた鹿ロースを置き、オリーブオイル、タイム、ニンニク、ブランデーでマリネし、筒状になるようにラップフィルムで包み成形する。
3. 真空袋に入れて真空包装する。
4. スチームコンベクションオーブンのヴァプールモードで、肉の芯温が65℃に達してから15分間キープできるようにしっかりと火を入れる。(※湯せんでの加熱も可能だが、その場合も同様に芯温が65℃に達してから15分間キープできるよう、湯温を管理できる機器を使用すること。
5. 調理が完了したら温かい場所に袋のまま休ませておく。
◆付け合わせ
1. リンゴは皮を剥いて、種と硬い筋の部分を取り除き、四等分のくし切りにする。
2. 鍋にバターを熱し、グラニュー糖を加えキャラメリゼし、そこにカットしたリンゴ、クローブのパウダーを入れて混ぜ合わせ蓋をする。150℃のオーブンで様子を見ながら全体が飴色になるように加熱する。可能であれば10分間隔で確認するのが望ましい。最終的には水分を飛ばし、少し塩をして完成とする。
3. 丹波シメジ、マイタケ、シイタケは5mmほどの賽の目切りにして混ぜ合わせ、フライパンにバターを入れ弱火で水分を出させるようにじっくりと火を入れる。
4. ある程度火がったらクリームを加え少し煮詰める。最後にバターを入れ全体をまとめ、塩、コショウで調味する。
5. ごぼうは水洗いし、ヘーゼルナッツオイルを絡め、アルミ箔に包み150℃のオーブンで30分ほど柔らかくなるまで火を入れる。
6. 火が入ったら1.5cmほどの長さに切り、直径5cmのセルクルの淵に円を描くように詰める。
7. 3のクロケットの項で灰汁抜きをした栗2個(★)の渋皮を取り除き、それぞれ6等分にする。
8. 鍋に入れ、ブイヨン、バターを入れて蓋をして、火が入るまで蒸し焼きにする(水分がなくなってしまってもまだ火が入っていいないようであれば加水する。指で潰れる状態であれば加熱完了)。
9. 指で潰れる状態であれば加熱完了
10. ビーツは1,5cm厚さの輪切りにし、5mmの芯抜きで12個抜く
11. オリーブオイルと軽く塩をして、コンベクションオーブンのヴァプールモード95℃で10分間柔らかくなるまで火を入れる。
12. 鍋に赤ワインビネガー、グラニュー糖を入れ火にかけ、沸騰させ煮詰める。煮詰まったらオレンジジュースを加えさらに沸騰させる。
13. 10のビーツを加え発色させ塩で調味する。
14. 菊芋は皮を剥き半分にカットする。菊芋が大きい場合は小さめの輪切りでもよい。軽く下茹でしておく。
◆ソースポワヴラード
1. 鹿ネックはぶつ切りにし、ロースから取り除いた筋などとともにオリーブオイルを敷いた鍋に入れ、しっかりと180℃程度のオーブンで焼く。
2. タマネギ、ニンジン、セロリ、ニンニクは1cmの賽の目切りにし、香りを出すように焼き色を付けておく。
3. 鹿肉が焼けたらブランデーを加え、うまみをこそげ取りアルコールを飛ばす。
4. 赤ワインを加え1/3の量まで詰める。
5. さらにフォンドヴォー、フォンドジビエを加え2/3の量まで煮詰めていき、粗くつぶした黒コショウを加えて15分ほど煮る。
6. バターで全体をまとめ、濾して水溶きコーンスターチで濃度を付け、さらに濾して完成。
◆ソースベアルネーズ
1. みじん切りにしたエシャロット、エストラゴンヴィネガー、白ワイン、粗く潰した白コショウを鍋に入れ、水分がなくなるまで煮詰める。
2. 煮詰まったら、ボールに移し卵黄、水とともに湯煎にかけ泡だて器で撹拌しながら加熱していく。
3. もたっとしてくれば澄ましバターを少しずつ加え乳化させる。
4. 乳化できれば濾しみじん切りにしたハーブを混ぜ合わせディスペンサーに詰める。
◆仕上げ
1. 真空袋から火を入れた鹿ロースを取り出す。
2. フライパンに多めのバターを温め、鹿ロースの表面を香ばしく焼き固めながら温めていく。この時バターをアロゼしながら焼いていくこと。
3. 鹿を焼いているとき、フライパンの空いているところで菊芋も温めながらバターを絡ませておく。
4. 温まったら表面にフルールドセル、黒コショウをして、1人前あたり三枚をカットし、リンゴのキャラメリゼ上に盛り付ける。
5. ごぼうのサークルの中心にキノコのクリーム煮をいれ、その上に猪バラのクロケットを盛りつける。
6. 上記の周りにビーツのマリネ、和栗のエチュベ、菊芋のソテーを盛り付け飾りも添える。
7. ソースベアルネーズをランダムに絞り、ソースポワヴラードをかけて完成。