★第8回ジビエ料理コンテスト★
お店で食べたいジビエ料理部門 農林水産省農村振興局長賞
木田 佳孝 様(株式会社ワイズテーブルコーポレーションXEX TOKYO Salvatore Cuomo Bros・東京都)
【レシピについて】今回メニューを考えるにあたり、私の暮らす千葉県で獲れるジビエや食材、郷土料理そしてお酒を使いたいと思いこれまで私が勉強してきたイタリア料理の知識、技術を取り入れながら自分なりの地産地消の料理を作り上げました。
選んだジビエは猪。数ある部位の中から選んだのはウデ肉などあまり使われない部位やそれらをミンチにしたもの、そしてガラです。
一般的によく使われるのはロースや肩ロース、バラでしょうか。ウデ肉やホホ肉などは人気があまり無く、破棄されるか餌として扱われることも多いようです。このような人気の無い部位にスポットをあて美味しく食べれることを知ってもらい命を無駄なく使うことで新しい市場価値を生み出し、廃棄コストの削減も期待出来ると考えました。
ジビエは高タンパクで低カロリーな食材。猪は鉄とビタミンB12 が特に豊富です。今回猪に合わせるのは茸です。茸は猪と同じく低カロリーな食材ですが豊富な食物繊維をもつので低カロリーでも満腹感を得られます。そして茸に含まれるビタミンD はタンパク質と一緒に摂ることでカルシウムの吸収を促します。
そして料理の一部であるラビオリの中に詰めたドルチェフォルテとはイタリアはトスカーナ州の郷土料理で猪のカカオ煮込みのことです。カカオを加えることで臭みを消したり脂肪の分解を促す効果があり猪と同じく鉄が豊富でマグネシウムや亜鉛など体の調子を整えるのに必要なミネラルが豊富です。このドルチェフォルテに千葉県の郷土料理であるチッコ豆腐というイタリアでいうリコッタチーズに非常に近いチーズを混ぜ合わせコクを加えています。
ラビオリとは対照的に猪のお肉そのものの美味しさも感じていただく為にイタリア風肉団子ポルペッティも構成要素に加えました。
一皿の中で変化する味わい、食感を楽しんでいただきたいです。
(※は作りやすい分量での記載です。)
●猪コンソメと茸のズッパ
《猪ブロード※》 | |
猪ガラ | 300g |
玉ねぎ | 100g |
ニンジン | 80g |
セロリ(茎) | 80g |
ローリエ | 2枚 |
ブラックペッパー | 5粒 |
クローブ | 5粒 |
水 | 1800ml |
《猪コンソメ※》上がりのうち60gを使用 | |
猪ブロード | 2kg |
猪ウデ肉 | 300g |
玉ねぎ | 50g |
ニンジン | 50g |
セロリ(茎) | 20g |
ローリエ | 2枚 |
卵白 | 2個分 |
ホワイトマッシュルーム | 300g |
塩 | 4.5g |
原木シイタケ | 300g |
塩 | 4.5g |
牛乳 | 15g |
生クリーム(38%) | 45g |
シュクロエミュル | 3g |
水溶きコーンスターチ | 適量 |
●猪のドルチェフォルテとチッコ豆腐のラビオリ
《猪のドルチェフォルテ》 | |
猪ウデ肉 | 340g |
塩 | 4g |
玉ねぎ | 50g |
ニンジン | 30g |
セロリ | 30g |
赤ワイン | 150ml |
水 | 適量 |
ローリエ | 1枚 |
ジュニパーベリー | 0.4g |
クローブ | 0.5g |
はちみつ | 10g |
アマゾンカカオペースト | 8g |
レーズン | 4g |
《チッコ豆腐※》 | |
牛乳 | 500g |
赤ワインビネガー | 30g |
パルミジャーノパウダー | 3g |
《ラビオリ生地※》 | |
小麦粉 | 180g |
セモリナ粉 | 70g |
卵黄 | 3個 |
全卵 | 2個 |
塩 | 2g |
《仕上げ》 | |
無塩バター | 16g |
ゆで汁 | 32g |
●猪のポルペッティーニ
《猪ポルペッティ》 | |
猪ミンチ(ウデ、バラ、肩ロース) | 100g |
塩 | 1.3g |
全卵 | 1/4個 |
パン粉 | 8g |
牛乳 | 16g |
ナツメグ | 0.2g |
ブラックペッパー | 0.2g |
ジュニパーベリー | 0.2g |
マジョラム | 0.1g |
ニンニク | 0.6g |
《猪ラード※》 | |
猪脂 | 350g |
水 | 適量 |
ニンニク | 1片 |
●スーゴディチンギアーレ
猪端肉、スジ | 530g |
玉ねぎ | 60g |
ニンジン | 30g |
セロリ | 30g |
トマトペースト | 5g |
白ワイン | 30g |
塩 | 適量 |
木戸泉 afruge No.1 2017 年 | 80g |
コーンスターチ | 適量 |
●玉ねぎのアグロドルチェ
赤玉ねぎ | 28g |
サンデマン ルビーポート | 10g |
赤ワインビネガー | 7.5g |
グラニュー糖 | 4.5g |
オリーブオイル | 適量 |
ニンニク | 1片 |
塩 | 適量 |
●仕上げ
松の実ロースト | 8g |
茸パウダー | 4g |
レッドアマランサス | 1g |
●猪コンソメと茸のズッパ
《猪ブロード》
猪ガラと水を深めの鍋に入れ強火で加熱し沸騰させる。沸騰したら表面がふつふつする程度に火加減を弱め、出てきた灰汁を取り除く。
玉ねぎ 芯の部分にばってんに切り込み 、人参 縦に切り込み 、セロリ、リードペーパーで巻いたローリエ、クローブ、ブラックペッパーを加え約2時間程煮込み完成。
《猪コンソメ》
猪ウデ肉、玉ねぎ、人参、セロリをみじん切りにする。
ボールに卵白と共に入れよく混ぜ合わせる。
深めの鍋に入れ、冷たい猪ブロードを注ぐ。
弱火にかけながら木べらで全体を掻き混ぜゆっくりと温度を上げていく。
卵白に火が入り材料がまとまってきたら中心に穴を開け弱火で液体を対流させる。2 時間程煮込みトーションをかましたシノワでゆっくりパッセしていく。
パッセしたコンソメを40%量になるまで煮詰める。
《猪コンソメと茸のズッパ》
マッシュルーム、原木シイタケをそれぞれスライスし1.5%の塩とともに真空にかけ12 時間おく。その後100℃のスチーム、もしくはお湯で30 分加熱し冷ましたらエキスを搾り取る。エキスを絞り残ったマッシュルームと原木シイタケはみじん切りにしてバターでじっくり弱火で痛めパラパラのパウダー状にもっていく。
猪コンソメとマッシュルームエキス、原木シイタケエキス、牛乳、38%生クリームを合わせ鍋で加熱し水溶き片栗粉で少し濃度をつける。シュクロエミュルを加えハンドブレンダーで攪拌させたら完成。
≪猪のドルチェフォルテとチッコ豆腐のラビオリ≫
・猪のドルチェフォルテ
猪ホホ肉、ウデ肉を大きめのぶつ切りにする。
玉ねぎ、人参、セロリはミルポワ状にカットする。
上記を赤ワインとともに容器に入れ12 時間浸け置く。
ザルにあけ、お肉と香味野菜の水気をしっかりペーパ等で拭き取り、お肉は1.2%の塩でマリネする。
お肉に薄力粉を薄くまぶしフライパンでこんがり表面に焼き色を付ける。
香味野菜も強火で表面にしっかり焼き色を付けてお肉と一緒に鍋に移す。
マリネに使った赤ワインを入れひたひたになる量の水を加える。強火にかけ一度沸騰させ灰汁を取り、ローリエ、クローブ、ジュニパーベリー、はちみつを加え蓋をし2 時間~2 時間半程極弱火で煮込む。
香味野菜、ローリエ、クローブ、ジュニパーベリーを取り除き、レーズンを加え蓋をせずに弱火で水分を飛ばしながら煮込んでいく。
液体が煮詰まり濃度がついてきたらアマゾンカカオペーストを削り入れ馴染ませ完成。
・チッコ豆腐
牛乳を鍋に入れ赤ワインビネガーを混ぜ入れる。
弱火で加熱し分離してきたら火を止め蓋をして10 分放置する。
布をかましたザルに流し入れ水分を切ったら完成。
・リピエーノ
猪ドルチェフォルテとチッコ豆腐、パルミジャーノパウダーをフードプロセッサーで滑らかになるまで攪拌して完成。
・ラビオリ
ラビオリ生地の材料を混ぜ合わせしっかり練り上げる。きれいに丸めラップで空気が入らないようにぴちっと巻き30 分静置。もう一度練り上げ再びラップで巻いたら冷蔵庫で12 時間以上寝かせ全体にしっかり水分を行き渡らせる。
パスタマシンを使い手が透けて見えるくらいの薄さまで生地を伸ばしていく。7.5㎝のセルクルで抜き、リピエーノを8g 中心にのせ半分に折り畳み両端をくっつけカッペレッティといわれる形に成形する。
≪猪のポルペッティーニ≫
パン粉と牛乳を予め合わせておく。ニンニクはみじん切りにし、ジュニパーベリーはミルミキサーで細かいパウダー状に攪拌しておく。
材料全てを混ぜ合わせ30 分以上寝かせ8g に成形する。
≪スーゴディチンギアーレ≫
バットお肉を広げ軽く塩を振りオリーブオイルを回しかけ230℃のオーブンで30 分焼きカリカリにする。白ワインを回しかけバットに焼き付いた焦げをこそげ落とす。
玉ねぎ、人参、セロリ、ニンニクはミルポワ状にカットし鉄フライパンで強火でしっかり焼き色をつける。
鍋でトマトペーストを炒め酸味の角がとれたら焼いたお肉と香味野菜を加え入れ水を入れ中火で煮詰めていく。水分が10%程に煮詰まったらパッセする。
木戸泉a fruge No.1 を1 /8 量まで煮詰める。
猪のスーゴとa fruge No.1 を66:1 の割合で合わせ水溶きコーンスターチで軽く濃度をつけて塩で調味し完成。
≪赤玉ねぎのアグロドルチェ≫
フライパンにニンニクとオリーブオイルを入れ弱火でゆっくり炒め香りをオイルに移す。ニンニクを取り出し強火にし細めの櫛切りにした赤玉ねぎを入れる。表面にきつね色くらいの焼き色を付けたら残りの材料を加えアルコールを飛ばしたら冷まして完成。
≪猪ラード≫
猪の脂を11㎝角くらいの大きさに切り鍋に入れ水多めに加える。ニンニクを入れ蓋をして弱火で煮ていく。水分がなくなったら足してを繰り返し脂がしっかり溶け出てきたらふたを外し水分を飛ばしていく。水分がしっかり蒸発したらパッセして完成。
≪仕上げ≫
・松の実ロースト
150℃のオーブンで15 分焼いて完成。
・茸パウダー
猪コンソメと茸のズッパを参照。
≪組み立て・盛り付け≫
①猪コンソメと茸のズッパを鍋に入れ、弱火で沸騰させないように加熱する。(80 80℃目安
②猪ラードを中火で加熱したフライパンに入れ猪のポルペッティーニを焼き、途中半割にしたマッシュルームと原木シイタケを加え焼く。表面に焼き色が付いたら200℃のオーブンで5 分加熱する。
③猪ポルペッティと茸をオーブンに入れたらラビオリを3 分茹でる。
④フライパンにバターとパスタの茹で汁を入れ温め、茹で上がったラビオリを絡ませお皿に盛り付ける。
⑤猪コンソメと茸のズッパをハンドブレンダーで撹拌し泡立たせお皿に流す。
⑥オーブンからポルペッティーニと茸を取り出しお皿に盛り付ける。
⑦ラビオリの上にスーゴディチンギアーレ、赤玉ねぎのアグロドルチェ、松の実ロースト、茸パウダーを盛り付ける。
⑧レッドアマランサスをポイントであしらったら完成。