ジビエ料理のレシピ紹介

野性味溢れる‘’イノシシのデクリネゾン‘’風光明媚な里山の恵み【第8回ジビエ料理コンテスト入賞/お店部門】

★第8回ジビエ料理コンテスト★
お店で食べたいジビエ料理部門 日本ジビエ振興協会代表理事賞

木村 晴悦様(ニュー・オータニ SATSUKI・東京都)

【レシピについて】今回、ジビエとはどういったものなのか?を掘り下げ、少しでも理解し、美味しいと思って頂けたらと思い応募させて頂きました。
使用食材に選択したイノシシは豊かな自然に恵まれた肥沃な丹波篠山の地で育ちコレステロールがたまりにくい良質の脂がのりきって、ジューシーでありながらも淡白であり栄養価も高く、まさに風光明媚なこの地が生んだ一級品。鳥獣による農作物の被害削減にも貢献している。ただリスクもあり料理人は常に食中毒と隣り合わせだということ。素晴らしい食材とはいえ安心安全にお客様に提供しなければならないので調理方法は真空低温調理やガイドラインに沿った加熱条件で温度管理し誰もが安定し提供できるものにしました。ジビエ料理は好き嫌いが分かれる料理として知られ、懸念されがちな肉質の固さや独特な味や匂いがあります。そこで初の試みとなる玉葱麦麹の力を借りてたんぱく質分解酵素のプロテアーゼで肉質を柔らかく、旨味成分のアミノ酸で美味しさアップ効果をはかり、ハーブやスパイスで中和させました。
イノシシはとてもグルメだといいます。どういったものを食べているのかなどを想像しクリエーションしました。まず一皿食べたときにイノシシをより良く知ってもらう為にデクリネゾンという様々な調理法で表現し、主体となるサルティンボッカの肩ロース玉葱麦麹でマリネしファルスにはクセのあるセージとどこか似ている春菊を使い、周りには定義となるセージ、生ハムでルーレにし、中心温度65℃15 分の低温調理後、パン粉付けをして周りを焼き上げているのが特徴でこれによりしっとり感と香ばしさを両立することができました。つくねはかみしめるほどに旨味のある赤身に脂身の入ったモモ肉、レンコンの食感を残し練りまとめ、片栗粉をまぶし170℃の米油で揚げたものをタレの中でグラッセというフランス料理の技法で艶のあるつくねに仕上げました。バラ肉は時短を踏まえ、たっぷりのスパイスでマリネした後、真空調理で85℃2 時間コンフィにしてから燻製にすることで料理に変化を加えました。
また栄養価を考慮し、付け合せの姫リンゴに含まれるビタミンC はイノシシ肉に多く含まれる鉄と一緒に摂取すると吸収が高まるため、黒豆クルミ、クリームチーズ、シェリーヴィネガー、ノアゼットオイルなどで甘味、酸味、塩味のバランスを調和させ、お口直しのイメージで仕上げました。
狩猟によって捕獲された鳥獣を害獣として処分するのではなく食すことで狩猟ハンターも報われ、私たちの命の源にもなり地域の資源として、また農作物の被害防止にも繋がり、皆が幸せになるのだと思います。

材料・分量(4人分)

●猪肩ロース肉のサルティンボッカ

猪肩ロース 300g
玉ねぎ麦麹(米麹で代替可) 30g
総合塩漬剤 2g
セージ 0.5パック
ハモン・セラーノ スライス 50g
小麦粉 50g
3個
ドライパン粉(フランスパンを乾燥させ細かくしたもの) 50g
発酵バター(通常のバターで代用可) 20g
《春菊のファルス》  
春菊 100g
サワークリーム 40g
ガーリックソルト 3g

●イノシシモモ肉のつくねグラッセ

イノシシモモ肉 150g
長ネギ 20g
レンコン(ブルノワーズ) 20g
レンコン(すりおろし) 20g
ショウガ(すりおろし) 3g
ジュニパーベリー 1g
片栗粉 5g
★醤油 4g
★酒 5g
★みりん 5g
★塩 2g
米油(揚げ油) 200ml
片栗粉(まぶし用) 10g
《絡める用のタレ》  
醤油 30g
30g
みりん 20g
砂糖 20g

●イノシシバラ肉のベーコン

イノシシバラ肉 200g
《ピックル液》  
白粒コショウ 5g
ニンニク 3g
コリアンダー 20g
クローヴ 3本
ジュニパーベリー 2g
スターアニス 1g
ローリエ 3枚
5g
総合塩漬剤 4g
100ml
   
米油 150ml
スモークウッド(ヒッコリー) 80g

●姫リンゴのコンポート

姫リンゴ(リンゴを型で抜いて代替可) 4個
白ワイン 30ml
100ml
和三盆 80g
ハチミツ 5g
レモン 0.5個
スターアニス 2g
ジュニエーブル 1g
《黒豆クルミとクリームチーズのサラダ》  
丹波黒豆クルミ  
クリームチーズ  
アゼットオイル(アマニ、オリーブオイルで代替可)  
   
ジロール茸 8個
発酵バター 5g
シェリーヴィネガー 5ml
適量

●ピーナッツバター香るソース・シュプレーム

《イノシシのジュ》  
イノシシの端肉(肩ロース、モモ、バラなど) 400g
米油 50ml
玉ねぎ 50g
エシャロット 50g
ニンジン 50g
セロリ 30g
タイム 1枝
姫リンゴのサイド 適量
ローリエ 1枚
発酵バター 50g
白ワイン 30ml
600ml
フォン・ブラン・ド・ヴォライユ 600ml

●デコレーション

木の芽 4枚
祇園黒七味 2g

作り方

●イノシシ肩ロース肉のサルティンボッカ

・下処理
イノシシ肩ロースはスジなどを取り除き、20cm の幅にカット、中心に向かって切り込みを入れシート状にする。
玉葱麦麴で全体を2 時間マリネする。あれば塩漬剤も少し使用。
(たんぱく質分解酵素、旨味成分の効果時間を考慮し最低1 時間はマリネ)
・ファルス
春菊はシャキシャキ感を残すよう、さっとボイルし水気をよく切り細かく刻み、サワークリーム、ガーリックソルトと合わせ絞り袋に詰めておく。
・ラップルーレ
サランラップを敷き、20 ㎝幅のシート状にした生ハムスライス、全体にセージ、肩ロースマリネの順にのせ、中心に春菊のファルスを棒状に絞りルーレにする。
・低温調理
ラップ両端をしっかり縛り65℃に設定したスチームコンベクションで中心温度が65℃になってから15 分間加熱し(65℃で約50 分、68℃に温度を上げ約5 分間)粗熱が取れたらラップを取り除く。
・パン粉付け、リソレ
低温調理したルーレをパン粉付けする。小麦粉、溶き卵、ドライパン粉の工程を2 回繰り返す。(衣を厚くし肩ロースのダメージを最小限にしたい)
熱したフライパンに米オイルを加え、パン粉付けしたルーレを転がしながらカリカリになるよう、途中バターでアロゼしながら香ばしく焼き上げる。休ませた後、盛り付け時に80g 位にカットする。

●イノシシモモ肉のつくねグラッセ

・下処理
イノシシモモ肉の余分なスジなどを取り除き、なるべく脂の入った赤身部位をチョイスし細か目のミンサーでミンチにする。
・つくね
ボールにモモ肉のミンチ、長葱のみじん切り、食感を楽しむ賽の目カット
のレンコン、モチモチ感が出るすりおろしたレンコン、アクセントの生姜、ジェニエーブル、★の調料、片栗粉を加え良く練り上げ、1 人前20g に丸めておく。
鍋に絡め用の調味料全て合わせ沸かしタレとする。
丸めたつくねは片栗粉をまぶして170℃の米油で揚げ、火にかけたタレの中でグラッセにする(つやが出るまで煮詰める)仕上がり時に芯温計で中心が加熱殺菌できているか確認する。(75℃1 分間)

●イノシシバラ肉のベーコン

・下処理
イノシシバラ肉のスジを取り除き、味がしみ込みやすく柔らかく仕上がるようにフォークや竹串などでピケする。
・ピックル液
全ての材料をミキサーにかける。
・真空調理(コンフィ)
バラ肉全体をピックル液で1 日マリネする。
真空パックにマリネしたバラ肉、米オイルを入れ85℃のスチームコンベクションで2 時間程火を入れる。
・燻製
封を開け時間のある限り冷蔵庫で乾燥させヒッコリーで燻していく。
50℃~70℃をキープし色付きにもよるが2 時間位の目安で温燻していく。
2mm にカットし提供。

●姫リンゴのコンポート

・コンポート
姫リンゴのヘタを取り、中をくり抜きケースにする。
(サイドは猪のジュで使用)
白ワイン、レモンスライス、ハチミツ、和三盆、水、スターアニス、ジェ
ニエーブルを真空パックに入れ65℃のスチームコンベクションで40 分火
を入れる。
・黒豆クルミとクリームチーズ
ボールに賽の目にカットした黒豆クルミ、クリームチーズ、ノアゼットオイル、シェリーヴィネガー、塩で味を調え、姫リンゴのケースに詰める。
・ジロール茸のソテー
焦がしバターでジロール茸をソテーしシェリーヴィネガーでデグラッセする。

●ピーナッツバター香る ソース・シュプレーム

・イノシシのジュ
鍋に米オイルをいれコンカッセにしたイノシシのスジや脂、肉のサイドをこんがり色付くまでソテーし、バターで香味野菜、リンゴのサイドを香りが出るように強火でソテー、白ワインでデグラッセし、水、フォン・ブラン・ド・ヴォライユ、タイム、ローリエを加え途中アクを取りながらとろ火で2 時間火にかけシノワで濾す。上に浮いた油を取り煮詰めていく。
・ピーナッツバター風味のソース・シュプレーム
濃厚なイノシシのジュにクリームを加え発酵バター、ピーナッツバターでモンテし、塩、胡椒で味を調える。

●盛り付け

皿の中央にソースを流し、筒状にカットしたサルティンボッカ、左下につくねのグラッセ、右上に木の芽を飾った姫リンゴ、ジロール茸、ベーコンを立てかけ、祇園黒七味を散らし完成。

 

調理写真