2014年10月07日
9月30日の「野生鳥獣肉の衛生管理に関する検討会」で厚生労働省から提出された「野生鳥獣肉の具体的な処理方法(案)」について、シカやイノシシの解体処理を行っている食肉処理業者に見ておいていただきたいポイントを青色で表示しました。
なお、既に衛生ガイドラインを作成されている都道府県や、まだ作成されたいない都道府県が、今後作成される「野生鳥獣肉の具体的な処理方法」に沿って改正または作成されるとは限りません。あくまでも参考資料として活用ください。
第1 一般事項
1 基本的な考え方
野生鳥獣肉を取り扱う者が、食用に供される野生鳥獣肉の安全性を確保するために必要な取り組みとして、狩猟から処理、食肉としての販売、消費に至るまで、野生鳥獣肉の安全性確保を推進するため、狩猟者や野生鳥獣肉を取り扱う食肉処理業者等の関係者が共通して守るべき衛生措置を盛り込んだものである。また、食用として問題がないと判断できない疑わしいものは廃棄とすることを念頭に、具体的な処理方法を記載している。
2.記録の作成及び保存
食中毒の発生時における問題食品(違反食品等又は食中毒の原因若しくは原因と疑われる食品等をいう。以下同じ。)の早期の特定、排除を可能とし、問題食品の流通や食中毒の拡大の防止を迅速、効果的かつ円滑に実施するため、狩猟から処理、食肉としての販売に至るまでの各段階において、記録の作成及び保存を行うよう努めること。
3.HACCP(危害分析・重要管理点方式)による衛生管理
省略
4.野生鳥獣肉を取扱う者の体調管理及び野生鳥獣由来の感染症対策
省略
第2 野生鳥獣の狩猟時における取扱
1 食用とすることが可能な狩猟方法
(1)銃による狩猟
省略
(2)わなによる狩猟
省略
(3)狩猟方法について記録を作成して食肉処理業者に伝達するとともに、適切な期間保存すること。
2 狩猟しようとする又は狩猟した野生鳥獣に関する異常の確認
(1)狩猟しようとする又は狩猟した野生鳥獣(わなで狩猟した個体及び捕獲後に飼育した個体を含む)の外見及び挙動に以下に掲げる異常が見られる場合は、食用に供してはならない。
イ 足取りがおぼつかないもの
各衛生ガイドラインに共通する異常のため、以下省略
(4)(1)の確認結果について記録を作成して食肉処理業者に伝達するとともに、適切な期間保存すること。
3 屋外で放血する場合の衛生管理
(9)放血の方法について記録を作成して食肉処理業者に伝達するとともに適切な期間保存すること。
4 屋外で内臓摘出する場合の衛生管理
(1)屋外における内臓摘出は、狩猟場所から食肉処理施設への運搬に長時間を要する場合など、狩猟後の迅速適正な衛生管理の観点からやむを得ない場合に限り、以下の項目の遵守を徹底すること。
(2)雨天時や野生鳥獣の体表が泥や糞便等で著しく汚染されている場合など開口部から個体の内部に汚染を拡げるおそれのある場合は、食肉処理施設に運搬して洗浄など適切な処理を行った後に内臓摘出すること。
(3)から(5)は省略
(6)摘出した内臓について、適切な衛生管理の知識及び技術を有している狩猟者が異常の有無を確認し記録すること。個体全体にも影響する異常が確認されたものについては、個体全体を食用に供さないこと。胃及び腸を除く内臓については、食肉処理施設に搬入することにより、食肉処理業者に異常の有無について確認させること。
(7)内臓摘出の実施状況について記録を作成し、食肉処理業者に伝達するとともに適切な期間保存すること。
(8)屋外で摘出した内臓は、食用に供さないこと。
5 狩猟した野生鳥獣を一時的に飼養する場合の衛生管理
狩猟した野生鳥獣を一時的に飼養し、食肉処理場に出荷する前に2(1)について確認し、異常が認められた場合は出荷しないこと。
第3 野生鳥獣の運搬時における取扱
(1)狩猟個体は、速やかに食肉処理施設に搬入すること。なお、必要に応じ冷却しながら搬入するよう努めること。また、水等により体表の汚染が体腔内に広がらないよう留意すること。
(2)食肉処理施設への搬入、搬入後の処理をスムーズに行うため、搬入前に食肉処理業者に搬入予定時刻等の情報を伝達すること。
(3) 省略
(4)運搬に係る時間、方法が不適切と認められた場合にあっては、食用に供さないこと。
(5) 省略
(6)狩猟者は、捕獲から搬入までに関する次の情報について記録を作成して食肉処理業者に正確に伝達するとともに適切な期間保存すること。
イ 狩猟者の氏名及び免許番号
各衛生ガイドラインに共通する項目のため、以下省略
第4 野生鳥獣の食肉処理における取扱
1 狩猟者における衛生管理についての確認
食肉処理場は、野生鳥獣の狩猟者と契約する際に、狩猟者が適切な衛生管理の知識及び技術を有していることを確認すること。
2 食肉処理場の施設設備等
(1)食肉処理施設の施設設備については、地方自治体が条例で定める食肉処理業の施設基準に加え、以下を設置すること。
イ 摂氏83度以上の温湯供給設備
ロ 吊り上げた際に頭部が床に触れない十分な高さを有する懸吊設備
(2)食肉処理施設の施設設備等に係る衛生管理については、管理運営基準ガイドライン第2の1から6を基本としつつと畜場法施行規則第3条も参考とすること。
(3)1頭ごとに内臓摘出およびはく皮作業の終了時には、器具の洗浄を行うこと。なお、洗浄の際は洗浄水の飛散などにより枝肉を汚染しないようにすること。
3 食肉処理業者が、解体前に当該野生鳥獣の異常の有無を確認する方法
(1)受入れの可否は、適切な衛生管理の知識及び技術を有している食肉処理業者が1頭ごとに、天然孔、排出物及び可視粘膜の状態について、異常の有無を確認するとともに、捕獲時の状況も踏まえ、総合的に判断すること。
(2)異常が認められた個体は、処理施設に搬入することなく、廃棄処分とすること。また、その際に使用した器具などは、速やかに洗浄・消毒すること。
(3)狩猟個体の仕入に当たっては、放血、内臓摘出及び運搬について適切な管理が行われたものを仕入れ、衛生上の観点から品質や鮮度等について点検し、点検状況を記録すること。また、食肉処理施設の責任者は、当該記録を適切に保存すること。
(4)搬入時に内臓が摘出された個体の受入に当たっては、狩猟者による異常の確認結果、搬入された内臓について、カラーアトラス等を参考に異常の有無を確認すること。内臓の状態が確認できない個体については、全部廃棄とすること。
(5)泥等による体表の汚染が著しい個体は、処理施設搬入前に(可能であれば、搬入口で懸垂し)、飲用適の流水を用いて体表を十分に洗浄すること。また、洗浄水が放血時の開口部や内臓摘出された個体の体腔等を汚染しないよう注意すること。さらに、解体作業時における汚染の拡大を防止するため、体表の余分な洗浄水を除去すること。なお、体表の汚染が著しい内臓摘出された個体は受け入れないこと。
(6) 省略
(7)個体を搬入した際には、個体ごとに管理番号をつけること等により狩猟及び運搬時の記録と紐付けることができるようにすること。
(8) 省略
4 食肉処理業者が解体後に野生鳥獣の異常の有無を確認する方法
食肉処理業者は、施設内で摘出した内臓又は狩猟者が搬入した内臓については望診及び触診により、狩猟者が屋外で内臓摘出し、胃及び腸を処理場に搬入しない場合については狩猟者が作成した記録により、異常の有無を確認し、以下の措置をとるほか、異常を認め廃棄するものについても、その部位と廃棄の原因について記録を作成するとともに適切な期間保存すること。
(1)内臓廃棄の判断
① 肉眼的に異常が認められない場合も、寄生虫感染のおそれがあるため、可能な限り、内臓については廃棄することが望ましい。
② 内臓の所見において、別紙カラーアトラスでは、臓器の異常部分の割面所見を示しているが、通常の処理過程では、部分切除、病変部の切開等は、微生物汚染を拡大する可能性があるため、行わないこと。なお、心臓についてはこの限りではない。
③ 内臓器取り出し処理時に肉眼的異常が認められた場合は、内臓については全廃棄とする。
(2)個体の全廃棄の判断 省略
5 食肉処理施設における工程毎の衛生管理
(1)放血等を行う場合にあっては、次に掲げるところにより行うこと。
イ 放血された血液による生体及びほかの個体の汚染を防ぐこと。
ロ 放血後において消化管の内容物が漏出しないよう食道を第一胃の近くで結さつし、又は閉そくさせること。
ハ 手指(手袋を使用する場合にあっては、当該手袋。以下この項において同じ。)が放血された血液等により汚染された場合は、その都度洗浄剤を用いて洗浄すること。
ニ 個体に直接接触するナイフ、結さつ器その他の機械器具については、1頭を処理するごとに(外皮に接触すること等により汚染された場合は、その都度。(2)及び(5)において同じ。)摂氏83度以上の温湯を用いて洗浄消毒すること。
(2)個体のはく皮は、次に掲げるところにより行うこと。
イ 省略
ロ 省略
ハ 省略
ニ 肛門周囲の処理に当たっては、消化管の内容物が漏出しないよう肛門を合成樹脂製の袋で覆い、直腸を肛門の近くで結さつするとともに、肛門部による個体の汚染を防ぐこと。結さつに当たっては、紐やゴム、結束バンドなどを使い、二重に結さつすること。
ホ はく皮された部分が消化管の内容物により汚染された場合においては、迅速に他の部位への汚染を防ぐとともに、汚染された部位を完全に切り取ること。
ヘ 手指が外皮等により汚染された場合は、その都度洗浄剤を用いて洗浄すること。
ト 個体に直接接触するナイフ、動力付はく皮ナイフ、結さつ器その他の機械器具については、1頭を処理するごとに摂氏83度以上の温湯を用いて洗浄消毒すること。
チ 体表の被毛には病原微生物やダニなどの寄生虫が付着している可能性が高いので、ナイフや手指と被毛との接触については細心の注意を払うこと。
リ はく皮の作業が終了したら、エプロン、長靴を外し、ブラシなどで、帽子、衣類等に付着した毛を払うなど、十分に毛を払い落としたうえで、清潔なエプロンや長靴を着用すること。その際、払いおとした獣毛や外したエプロンが枝肉を汚染しないように、十分注意すること。
(3)内臓の摘出は、次に掲げるところにより行うこと。
イ 個体が消化管の内容物により汚染されないよう適切に行うこと。
ロ 内臓が床、内壁、長靴等に接触することによる汚染を防ぐこと。
ハ はく皮された部分が消化管の内容物により汚染された場合においては、迅速に他の部位への汚染を防ぐとともに、汚染された部位を完全に切り取ること。
ニ 手指が消化管の内容物等により汚染された場合は、その都度洗浄剤を用いて洗浄すること。
ホ とたいに直接接触するナイフ、のこぎりその他の機械器具については、1頭を処理するごとに(消化管の内容物等に汚染された場合は、その都度)摂氏83度以上の温湯を用いて洗浄消毒すること。
ヘ 摘出した内臓については4により異常の有無を確認すること。
(4) 省略
(5)枝肉の洗浄は、次に掲げるところにより行うこと。
イ 洗浄の前に獣毛又は消化管の内容物等による汚染の有無を確認し、これらによる汚染があつた場合は、汚染された部位を完全に切り取ること。着弾部位(弾丸が通過した部分を含む)の肉についても、汚染されている可能性があることから完全に切り取り、食用に供してはならない。
ロ 省略
ハ 省略
(6) 省略
(7)冷蔵前に銃弾の残存について金属探知機により確認することが望ましいこと。
(8)枝肉、カット肉及び食用に供する内臓は、摂氏10度以下となるよう冷却すること。冷蔵設備の規模や能力、冷蔵する枝肉の数量等を総合的に勘案して、摂氏10度以下の温度で冷蔵できるよう適切な温度管理を行うこと。
(9)冷蔵時に、個体又は部位ごとに管理番号をつけること等により狩猟、運搬及び処理の記録と紐付けることができるようにすること。
(10)省略
(11)食品衛生上の危害の発生の防止に必要な限度において、狩猟、運搬、処理、販売先及び販売形態に関する記録及びその他必要な事項に関する記録について、流通実態(消費期限又は賞味期限)等に応じて合理的な保存期間を設定すること。
(12)衛生的な処理が行われているかを検証するため、また、安全性の確保のため定期的に処理した食肉及び施設の設備・器具等の細菌検査を行うことが望ましいこと。
第5 野生鳥獣肉の加工、調理及び販売時における取扱
(1)野生鳥獣の枝肉等を仕入れる場合は、食肉処理業の許可を受けた施設で処理されたものを仕入れること。仕入れ時には、食肉処理施設の責任者から、当該個体の狩猟及び処理についての情報を得て、原材料の安全性を確保するとともに、色や臭い等の異常や異物の付着などがないか確認し、異常のある場合は、仕入れを中止すること。また、野生鳥獣肉の処理又は調理の途中で色や臭い等の異常を発見したときは、直ちに取扱いを中止し、廃棄するとともに、その旨を食肉処理業者等の仕入先に連絡すること。
(2) 省略
(3) 省略
(4) 省略
(5)食肉販売業者が野生鳥獣肉を販売する場合は、家畜の食肉と区別して保管し、野生鳥獣肉である旨がわかるよう鳥獣肉の種類や加熱加工用である旨など健康被害を防止するための情報を明示して販売するよう努めること。
第6 野生鳥獣肉の消費時(自家消費を含む)における取扱 省略