2021年11月25日
『鳥獣対策・ジビエ利活用展』に弊協会代表理事の藤木をお招きいただき、約40分、ジビエについてお話しいたしました。
全国の鳥獣被害の現状などの背景、基本的なジビエ料理の知識から始まり、2014年の厚労省のガイドライン策定以降、ジビエ振興が国の政策に乗って拡大してきた経緯を解説。また、2018年に設立された国産ジビエ認証制度と、それに準じた適切な処理のあり方などについてもお話ししました。
聴講にいらしていたのは、主に農業や処理施設事業者、自治体の関係者などのようです。皆様の様子を拝見していると、HACCP、外食産業の動向、国産ジビエ認証施設が連携する『センター事業』の話題のときに、熱心にメモを取ったり、スマホで資料を撮影したりする姿が見られ、皆様の興味関心の方向性が感じられました。
特に注目度の高かったのは、ジビエへの大企業の参入、社食利用の拡大など、新しいマーケットの開拓について。処理施設の規模や性格上、大きな市場への参入は難しいと考えられていますが、今後はニーズが高まりそうで、供給も含め、処理施設事業者が取り組むべき課題となるかもしれません。
質疑応答は時間の都合で1人しか受け付けられませんでしたが、ジビエの季節による食味の違いについて質問があり、藤木が料理人の立場から回答していました。
「猟期が11月から2月までの冬の期間ですし、イノシシの脂が乗るのも冬だと言われています。しかし、寒くなるとシカは落ち葉や笹、木の皮くらいしか食べるものがなくなるので、猟師さんには、新芽を食べて大きくなる初夏のシカが良いという方もいます」(藤木)
解体処理施設の建築を検討しているという質問者は、「料理人の立場からの意見は貴重。今後の施設運営の参考にしたい」と話していました。
◆ブースは減少、しかし別展示のジビエ関連がアツい
今回の「鳥獣対策・ジビエ利活用展2021」での講演は、『アグロ・イノベーション2021』の一部として行われたもの。「草刈り・除草ワールド2021」「フローラル・イノベーション2021」「アグリビジネス創出フェア」と併催で、隣接会場では『国際ドローン展』『メンテナンス・レジリエンスTOKYO 2021』も開催される一大イベントでした。
しかし、今年のジビエ関連の展示はわずか3ブース。鳥獣対策関連も5ブースで、昨年盛り上がった試食の提供も見られず、少々寂しい内容でした。すぐとなりの国際ドローン展の盛り上がりとは対照的です。これについて、主催者の日本能率協会の関係者は、コロナ禍での出展控えなどが原因ではないかと話しています。
「申込み締め切り時点でコロナの流行が収まっていなかったため、自治体関係の出張が認められなかったことが一因ではあります。しかし、ジビエが飲食事業者や消費者向けの内容であるのに対し、本展示会の来場者が、農業関連の事業者ばかりというミスマッチも課題のひとつかと思います」(主催関係者)
主催者は、今後誘客の促進や異なった展示会の検討など、対策を検討していくとしています。
一方で、「鳥獣対策・ジビエ利活用展」以外の展示会で、ジビエ関連で3件の出展がありました。捕獲者向けのアプリ「Hunter Go」を静岡県と開発、試験運用を始めている東芝ライテック(アグロ・イノベーション、スマートアグリ技術展)。「アグリビジネス創出フェア」の吉備国際大学と岩手大学の2件です。
吉備国際大学は、南あわじ志知キャンパス(淡路島、南あわじ市)での「狩猟部」の活動が拡大し、学内に処理施設が建設され、学生たちが有害鳥獣駆除、ジビエの商品開発に取り組んでいる様子を紹介。大学の近くに缶詰工場を建設し、イノシシの缶詰を製造する話も持ち上がっているそうで、今後の動きに注目です。
岩手大学は公衆衛生学研究室が「ジビエの迅速簡易検査法の開発」で出展し、サルモネラ、大腸菌、カンピロバクターなどを最短10分で検出できる3つの技術を紹介。2017~20年の国の研究事業で開発されたもので、全国3自治体で実証実験も行っています。まだ上市はされていませんが、潜在的ニーズの高い技術。こちらも今後の動きが気になります。
鳥獣対策・ジビエ利活用展を含むアグロ・イノベーション2021は26日(金)まで開催しています。