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「社食でジビエ」広まる

2022年11月19日

社食でジビエを扱う事例が、徐々に増えています。三菱地所では、11月7日から11日までの1週間、社員食堂「スパークル」で、ジビエメニューを毎日日替わりで提供し、SDGs啓発を行うイベントを行いました。

これは、先に報じた「食べて応援!SDGs“秋の国産ジビエフェア”」に連動して行われたもの。「国産ジビエブランド推進コンソーシアム」事業の一部に位置づけられ、大手町・丸の内・有楽町エリア(以下「大丸有エリア」)のレストラン20店舗が参加したイベントですが、三菱地所からのオファーで、同社の社員食堂での連動開催が決定されたそうです。

「大丸有エリアを起点としたSDGs活動を推進するために、当社が主体となって取り組む大丸有SDGs ACT5の活動として、社内外でさまざまなSDGs啓発活動をしていますが、今回はジビエを切り口としてSDGs啓発につなげたいと考えて開催を決めました」

と話すのは三菱地所サステナビリティ推進部の高橋さん。

ジビエの存在を知ってはいても、食べたことのある人やSDGsとの関連を知る人は多くはない。そこで、ジビエを食べることでどんな社会貢献ができるのかを知ってもらうために、メニュー提供だけでなく、ジビエとSDGsとの関連を学べるパネルを展示し、社員に対する学びの場を提供したそうです。

そのパネルも特徴的。ジビエがアプローチする社会課題として「農業への被害」「林業への被害」、利活用されず増える「廃棄物の発生」は、ジビエ関係者なら周知のことですが、「畜産の課題」「食料危機」を挙げるのは今までにあまり例がないのでは。広い視野でジビエを見ている点、ジビエ協会としても非常に参考になります。

 

自然に社会貢献

SDGsのフレームワークを通じてジビエを扱うと、非常に自然な流れで取り組める点も参考になりました。三菱地所のサステナビリティ推進部長の榑林康治氏に聞くと、こんな回答が聞かれました。

「不動産が主業である三菱地所がSDGsに取り組むならどんなことをすべきなのか。『SDGs コンパス』(SDGsを考える指標)に則って考えると、自分たちのマテリアリティが見えてきます。そこに企業のパーパスをかけ合わせると、取り組むべき社会課題が見えてきます。そこで弊社が取り出した課題のひとつが「環境」でした。『ネイチャーポジティブ』を目指してジビエを扱うのもその流れ。なので自然に取り組めるのだと思います」

外側から取ってつけたようにSDGs、ジビエに取り組むのではなく、内側から考えた結果として取り組む姿勢が重要ということでしょう。

「だから、パネルを展示したのもジビエを通じて社会貢献ができますよ、ということを伝えるだけでなく、社会課題に対していろいろなアプローチができる、ということを知ってもらい、考えてもらいたいから。何かをやろうとしたときに、いろいろな視点から考えられるようになってほしいと思っています」

と榑林部長。こうした広い視点でジビエを扱うことが大切なのかもしれません。

ジビエの週間メニュー。赤枠はジビエ協会が加えたもの

 

ただ、社員食堂でジビエは、どうしても価格がネックになります。高橋さんも、「価格がどうしても高くなるのでフェアとしてならいけますが、毎日のメニューにするのは難しい」と話しています。ジビエの価格安定・流通安定は、今後の大きな課題です。消費拡大と「卵が先か鶏が先か」という関係にはなりますが、捕獲者・生産者、流通事業者の皆さんとともに、ジビエ協会も取り組んで参りたいと思います。

取材日のメニューは「ピリッと辛い 鹿肉チョリソーのアラビアータ」。鹿肉の味をうまく活かし、かといって主張しすぎない絶妙のバランスの味わいです。この日もメニューは完売。食べた方の一人は、次のように感想を話しています。

「鹿肉は初めて食べたが、良い意味で普通。もっと臭いとか、クセが強いとか、いろいろあるんじゃないかと身構えていたが、気にならないし、言われなければ鹿肉とは分からないくらい」

またある人は「香りが良い」という感想。

「“臭い”のではなく、普通の肉とは違う風味と香りがあってそれがいい。他のメニューも食べたくなりました」

提供しているのは国産ジビエ認証取得施設の肉で、血抜きや処理のレベルが高いのはもちろんですが、調理の腕もさすがの一言でした。今後も、さまざまな企業さまと連携し、ジビエの消費拡大に努めていきたいと思います。