2024年06月19日
6月7日、服部栄養専門学校(東京都渋谷区)の授業「レストラン論」で、弊会代表理事の藤木が講師として招かれ、授業を実施しました。
「レストラン論」は、レストラン等飲食店の経営、運営についての実践的な授業で、その一部に「外食産業論」があります。この外食産業論は毎回テーマを設定し、関連する専門家を講師に招くもので、第一線で活躍する一流ばかりを講師にお招きしているそう。このカリキュラムは、学校OBが20年経っても「今でも覚えている」と話すほど生徒たちに鮮烈な印象を残すようで、今でも人気のある授業となっています。光栄にも、今回は藤木を「ジビエ」の講師として選んでいただいたということになります。また、通常の授業に正式にジビエが組み込まれたのも、今回が初めてとのことです。
授業は、前半が座学で「ジビエの概況」、後半は動画を使用しての「シカ肉からジビエの各部位の特徴を学ぶ」。最後に、調理実演、試食を交えた「ジビエ調理のポイント、旨味を味わう」という3段構成でした。冒頭、藤木は「ジビエを学ぶことは皆さんにとって大きな強みになるはず」と話します。
「今、日本全国、有害鳥獣で困っていない地域はありません。そして地域のお店で働くようになれば、猟師さんや行政の方から『獲れたジビエを使ってくれ』と言われることも少なくありません。その一方で、さばき方や調理法、加熱法など、ジビエの扱い方をきちんと知っている人はあまり多くないのが実情です。つまり、ジビエを知っていれば、お店の人や地域の人から頼りにされる、大事にされることにつながるでしょう」
また、地域振興の面でもジビエが武器になるとしています。
「ジビエのお肉だけでは料理は成り立ちませんよね、だからジビエに負けない強い野菜が必要です。その時に使えるのが地域の食材。今では野菜だけでなく、チーズやきのこなど、ふんだんな地域の食材をジビエと合わせることができるようになっています」
授業では、有害鳥獣被害の現状や、ジビエ振興が始まった背景などを説明し、動画で解体の仕方や、部位ごとの特徴などを解説しました。調理実演は服部栄養専門学校の先生に、シカ肉のロースをバターで「アロゼ」(上から脂を回しがけしながら加熱する調理方法)していただき、同様に調理したものを試食しました。授業を統括する西洋料理教授の関口智幸氏は、「若い子は、長い時間集中するのが苦手だが、100分の長い授業にも関わらず、すごく集中していた」と藤木の授業内容ともに学生たちの授業態度を絶賛していました。
授業の最後の質疑応答では鋭い質問が相次ぎました。「季節ごとの違いはどう見極めたらよいか」「自家消費の際の留意点は何か」「取りにくいという鹿バラ肉の活用法はあるか」など、料理人らしいマニアックな質問も。
終了後、受講した学生たちに感想を聞くと、捕獲したうち10%しか食肉利用されていないことや、多くが打ち捨てられるように埋設処理されていることに驚いた、ショックを受けたという感想が聞かれたほか、「枝肉全体からの処理の仕方を動画とはいえ見れたことがとても勉強になった。もっと身近に感じることができるようになればジビエも普及するのではと思った」「農業被害から始まっていること、地方活性化に役立つことから考えると、ジビエはSDGsなんだと思った」と、ジビエを冷静に受け止め、分析する声も聞かれました。また、卒業後の進路が明確に見えているだけあって、「和食だがジビエを使いたい」「集団調理でもジビエを使えるのではないかと思った」等、ジビエの利用についても具体的に想定していた点も印象的でした。
教授の関口氏は授業の最後に、藤木が始めたジビエ振興が、国を動かすまでになっていることに触れ、「このことを、どんな角度でも良いから考えてほしい」と生徒たちに呼びかけていました。授業後、関口氏にこれについて聞いたところ、「料理人は美味しいものを作るだけでなく、社会を変える、動かす力があることを感じ、考えてもらいたいと思った」と話しています。
「ジビエを身近に感じ、使ってみたいと思ってもらえたはず。それが一番うれしいし、ありがたいこと。そして、藤木さんが呼びかけたことで、多くの料理人だけでなく大臣や行政が動いていることも、なんとなく感じてくれたと思う」
藤木は今回、「料理人を志す若い人に、少しでもジビエを知ってもらえればという思いでお引き受けした」とのことですが、「生徒さんたちの授業に臨む姿勢、情熱に打たれただけでなく、ジビエを使ってみたいという思いを持っていることも感じられた」と、確かな手応えを感じていました。
↑授業終了後にも藤木に質問に来る生徒たちの様子