ジビエ料理のレシピ紹介

紅葉に染まる猪鹿蝶 −筑前煮の再構築−【第8回ジビエ料理コンテスト入賞/お店部門】

★第8回ジビエ料理コンテスト★
お店で食べたいジビエ料理部門 全国日本調理技能士会連合会会長賞

原 健太朗 様

【レシピについて】日本の家庭の定番料理である筑前煮。筑前煮の鶏を猪と鹿に置き換えて別の形に再構築させた一皿です。筑前煮は地域によってがめ煮とも呼ばれ、入れる具材も少しずつ変わります。何より家庭それぞれの味があり、おばあちゃんの味、給食の味・・・誰もが思い出を持っていることでしょう。そんな筑前煮を要素に分解し意外な形で再構築してみせることで、食べ手にそれぞれの思い出を楽しんでもらえたらと思って作りました。この料理は作り手が作り込むのは7割、あとは食べ手が想像をふくらませることによって完成する料理と言えます。
花札の猪鹿蝶をモチーフにして「萩に猪」「紅葉に鹿」「牡丹に蝶」を表現しました。素揚げ牛蒡と球状の人参で萩、人参の飾り切りで牡丹、蓮根の飾り切りと松葉銀杏で蝶を作っています。人参ソースの鮮やかな紅と筍ソースの黄で全体を包んで、色づく秋の情景にまとめました。

材料・分量(4人分)

●基本調味料

1000ml
本枯節 20g
羅臼昆布 10g
粗塩 100g
にがり 10g

●鹿肉の有馬糀煮

鹿ロース 100g
鹿スネ 100g
玉ねぎ 50g
牛乳(煮込み用) 200ml
塩糀(煮込み用) 大さじ1
塩糀(煮込み用) 大さじ1
未山椒 大さじ2
みりん 大さじ2
きび砂糖 大さじ2
濃口醤油 大さじ1

●シイタケの猪つくね

猪ミンチ 80g
牛乳(煮込み用) 200ml
どんこシイタケ 4個
玉ねぎ 20g
ニンジン 20g
ショウガの絞り汁 小さじ1
大和芋 10g
白味噌 10g
全卵 15g
きび砂糖 小さじ1
みりん 大さじ1
日本酒 200ml
太白胡麻油 大さじ1
片栗粉 5g

●ニンジンの摺り流し

金時人参(雪下人参やフルーツ人参で代用可) 400g
出汁 300ml
5g
きび砂糖 大さじ1

●タケノコの摺り流し

タケノコの水煮(市販品を使う場合は国産品) 200g
出汁 150ml
2.5g
きび砂糖 大さじ1

●ゴボウの素揚げ

ゴボウ 100g
太白胡麻油 揚げるのに必要な量
1g

●海老芋の白煮

海老芋(里芋で代用可) 厚み1.5cm×4個
米ぬか 大さじ1
米のとぎ汁 300ml
出汁 300ml
4g
きび砂糖 大さじ1

●牡丹人参

金時人参(雪下人参やフルーツ人参で代用可) 厚み1cm×4個

●レンコン饅頭

レンコン 80g
銀杏 4個
本葛 15g
出汁 大さじ2
1g
きび砂糖 小さじ1
片栗粉 大さじ1
太白胡麻油 揚げるのに必要な量

●酢蓮

レンコン 厚み5mm×4個
米酢(変色防止用) 大さじ1
米酢(煮込み用) 大さじ4
小さじ1
グラニュー糖 大さじ2
鷹の爪 輪切りを3切

●あしらい

銀杏 8個
小さじ1
絹さや 8枚
2g
ニンジン 直径5mmの球×24個
もみじの葉 8枚
松葉 4本
柚子 2cm四方

作り方

●基本調味料
① 濃いめの二番出汁を引く。羅臼昆布を水に入れ60 度で1 時間抽出する。95 度まで温度を上げて本枯節を入れ弱火で10 分間煮込む。はっきりした二番出汁を取りたいので鍋に蓋をして抽出する。以降ではこれを「出汁」として使う。
② 粗塩とにがりを鍋に入れ、塩がさらさらになるまで弱火で水分を飛ばす。以降ではこれを「塩」として使う。にがりを加えることで旨味が加わる。
 
●鹿肉の有馬糀煮
①鹿ロース肉と鹿スネ肉を一口大(約25 g)に切る。
②鹿肉をすりこぎで叩いて繊維をほぐして、牛乳に6 時間漬けることで臭みを抜いて柔らかくする。
③玉ねぎをすりおろして塩糀と合わせ、鹿肉を12 時間漬け込む。玉ねぎのプロテアーゼの酵素を作用させて肉を柔らかくすることが狙いである。
④鹿肉を軽く洗って鍋に入れ、鹿肉が浸るくらいの水と、塩糀、実山椒、みりん、きび砂糖、濃口醤油を入れる。弱火で6時間やさしく煮込む。水が減ってきたら足す。そのあと常温で4 時間置き味をなじませる。
 
●椎茸の猪つくね
①猪肉のミンチを牛乳に6 時間漬けることで臭みを抜いて柔らかくする。ざるに上げて牛乳を切る。
②玉ねぎをすりおろす。人参はみじん切りにしてレンジアップする。生姜を絞る。大和芋をすりおろす。大和芋を加えることでふんわり感が出る。
③猪肉のミンチに白味噌を合わせて粘りが出るまでしっかり練ったあと、上記の材料と、全卵、きび砂糖を混ぜ合わせる。ふんわり感を出すため非常に柔らかい生地になっているので冷蔵庫で2 時間冷やして固める。玉ねぎのプロテアーゼの酵素が作用して猪肉が柔らかくなる。
④椎茸の軸を切り取り、裏側に片栗粉をたたいて、生地20 g を塗る。
⑤フライパンに太白胡麻油を引き、生地を下側にして椎茸を置き、こんがりした焼き色がつくまで中火で焼く(約3 分)。ひっくり返して、椎茸にこんがりした焼き色がつくまで中火で焼く(約2 分)。
6. 日本酒を入れてフライパンに蓋をして中火で10 分間蒸し焼きにする。これで生地が蒸気を吸ってふっくらする。念のため芯温を計測して90 度以上になっていることを確認する。
7. 最後にみりんを絡ませて照りを出す。
 
●人参の摺り流し
1. 金時人参をアルミホイルに包んで、250 度のオーブンで1 時間加熱し甘みを引き出す。
2. 金時人参を小さく切り、出汁と合わせてミキサーにかけてなめらかな摺り流しにする。
3. 鍋に移して弱火にかけ、塩ときび砂糖で味を整える。金時人参の甘みをじゃましないよう、きび砂糖は角取り程度に加えるだけでよい。
 
●筍の摺り流し
1. 生の筍が手に入る時期であれば生の筍を湯がいて水煮を作る。それ以外の時期で市販の筍の水煮を使う場合、(国産品であっても)保存のために酸化防止剤が入っておりこの酸味がじゃまになるため、筍を5 mm 角に切って、熱湯でゆでこぼす作
業を2 回行う。
2. このまま筍をミキサーにかけても繊維が残ってなめらかな仕上がりにならないので、いったん冷凍庫で凍らせて細胞壁を壊す。
3. 凍った筍と出汁を鍋に入れて15 分間弱火で煮る。
4. ミキサーにかけてなめらかな摺り流しにする。
5. 鍋に移して弱火にかけ、塩ときび砂糖で味を整える。
 
●牛蒡の素揚げ
1. 牛蒡をスライサーで薄く剥いて水に浸してアクを抜く。
2. 牛蒡をざるに並べて天日で12 時間干す。水分が飛んで牛蒡の旨みが凝縮する。
3. 太白胡麻油を150 度まで温めてチップスのようにぱりっとなるまで揚げる(約2
分)。油を切って塩を振っておく。
 
●海老芋の白煮
1. 海老芋は六方に剥いて面取りする。
2. 海老芋、米ぬか、米の研ぎ汁を鍋に入れ、沸騰しないくらいのごく弱火で20 分間糠湯がきする。これで海老芋が白く仕上がる。
3. 海老芋、出汁、塩、きび砂糖を鍋に入れ、沸騰しないくらいのごく弱火で20 分間ほどやさしく煮る。そのまま常温まで冷やして含ませる。
 
●牡丹人参
1. 金時人参を牡丹の形に剥く。
2. 蒸し器で10 分間蒸す。
3. 上記の人参の摺り流しの中に入れて弱火で10 分間煮る。そのまま常温まで冷やして含ませる。人参で人参を煮ることによって旨みを凝縮させる。
 
●蓮根饅頭
1. 蓮根をすりおろす。
2. 銀杏を剥く。フライパンに銀杏、水100 mL、塩を入れ、強火で3 分間蒸す。銀杏は半分に切っておく。
3. 本葛を出汁で延ばし、蓮根、銀杏、塩、きび砂糖と合わせる。
4. 25 g をラップに取って茶巾に絞って輪ゴムで止め、蒸気を立てた蒸し器に並べて中火で15 分間蒸す。常温まで冷えたら形を丸く整えて冷蔵庫で冷やす。
5. 片栗粉をまぶして、太白胡麻油を160 度まで温めて表面が固まるまで揚げる(約3分)。蓮根饅頭は鍋で練って作るのが通常だが、蓮根が空気に触れるとアクが回って色と風味が落ちてしまうため、ラップで密閉した状態で蒸す→揚げるの手順を取っている。
 
●酢蓮
1. 60 度の酢水で蓮根を15 分間温める。飾り切りができる程度に柔らかくする以外に、蓮根のペクチンを硬化させてシャキシャキの仕上がりにする狙いがある。
2. 蓮根を蝶々の形に剥く。
3. 酢水を95 度まで温め、蓮根を弱火で5 分間茹でる。
4. 米酢、塩、グラニュー糖、鷹の爪を合わせた甘酢に6 時間漬けて味を含ませる。
 
●あしらい
1. 銀杏を剥く。フライパンに銀杏、水100 mL、塩を入れ、強火で3 分間蒸す。松葉を一本ずつに分け銀杏を挿す。
2. 水100 mL に塩を入れて沸騰させ、絹さやを15 秒間茹でる。氷水にさらして色止めする。
3. 人参を5 mm の球にくりぬく。海老芋を煮た出汁の残りに入れて5 分間煮て柔らかくする。
4. 柚子は千切りにする。
【盛り付け】
1. 筍の摺り流しを大さじ3 引く。次にその中央部に、人参の摺り流しを大さじ3 引く。人参のほうが比重が大きいので二重の同心円に広がる。
2. 「萩に猪」:素揚げ牛蒡と球状の人参を置いて萩とする。その上に椎茸の猪つくねを置く。天に柚子をあしらう。3. 「紅葉に鹿」:海老芋の上に、鹿ロースと鹿スネをひとつずつ置く。もみじの葉をあしらう。
4. 「牡丹に蝶」:牡丹人参の上に蓮根饅頭を置く。蓮根饅頭に松葉銀杏を挿して蝶々の触角とし、蝶々に切った酢蓮を置く。
5. 絹さやをあしらって緑を入れる。

調理写真